17 Aug 09 グーグル情報革命の崩壊(3)/山本一郎(イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役)(Voice) - Yahoo!ニュース yaruo

情報を処理する量が増えたことで、私たちは何が必要な情報で、重要な事柄であるのかを見失いつつある。正確な報道や貴重な事実を知るための活動は、ネットが発展したことで逆に困難になってしまっている。考えてもらいたい。ある方面に熟達するために必要な知識の量を。仮に貴方が、ジャズやアニメに興味をもち、ネットで検索したとする。そこには膨大なデータが何万件、何十万件とヒットするだろう。エントリーユーザーが特定の方面の知識を十分に得ようと思ったら、情報の摂取がお手軽になったぶんだけ、記憶し、把握しなければならない基礎的な知識も累乗的に増えてしまうことを意味する。知識を神のいる天に届くまで積み上げるデータベースは、人間が知識労働をするために必要な専門知識の量を極大化し、塔を登ることができる人と、そうでない人との埋めがたい差をはっきりさせてしまったのだ。

 そして、高い専門性同士は、往々にして激しくその対立を引き起こす。他の専門性がもつ情報の価値を、理解できなくなるからだ。出産に直面している妻は、夫の釣りの趣味を理解できないのと同様に、老人は深い若者文化を容認できず、アニメオタクは不気味がられ、事件が起きると犯罪者のプロフィールから社会が叩きやすい属性だけが切り出されて報じられる。社会的知の調整弁となるべき教養は忘れ去られ、たんなる知識としてクイズ問題の具になってしまうのだ。

このエントリーをはてなブックマークに追加