“さる1月25日未明、アメリカ・ヒューストン市の高級住宅街の路上で、巡回中の警察官が、駐車していた新車のメルセデス・ベンツの車内で一人の男性が死んでいるのを発見した。男性の頭には銃弾が打ち込まれており、手には38口径の拳銃が握られていた。傍らには遺書らしき書きつけも置いてあり、警察は自殺と断定した。
男性は43歳のクリフォード・バクスターという人で、昨年5月までエンロンの副会長をしていた。昨年12月初めにエンロンが倒産し、捜査当局や議会が不正経理などについての調べを始めていた。バクスターは、自分に対する不正の嫌疑に耐えられず、自殺したのではないか、と報じられた。バクスターは、辞任前にエンロンのストックオプション(自社株を買う権利)を行使して3500万ドルを手にしていた。
ところがその後、エンロン関係者の中から、バクスターは自殺するはずがないのではないか、という声が聞かれ出した。昨年5月にバクスターがエンロンを辞めたのは、自社の経理処理に不正があるのに会長らがそれを改めようとしないことを指摘した上での抗議の辞任だった。
バクスターが死んだのは、議会に証人喚問される直前で、精神的な圧迫があったのか、ふだんはタバコをあまり吸わないのに、ヘビースモーカーになっていたという。こうした状況は「自殺」を思わせるものだが、その一方で彼は死の何日か前に「ボディガードを雇わないといけないかもしれない」と漏らしていたという。(関連記事)
別の報道では、バクスターは知人から「ボディガードを雇った方がいいのではないか」と忠告されたが、不要だと答えていたという。とはいえこの報道でも、バクスターの家族は皆、彼の死は自殺ではないと考えている、と指摘している。(関連記事)
バクスターをよく知っているエンロンの社員は、彼は嘘が嫌いなまじめな人で、だからこそ自社の不正経理の拡大が耐えられなかったのだ、と考えている。そんな彼なので、議会や捜査当局が話を聞かせてほしいといえば、自殺するのではなく、逆にエンロンの不正の仕組みを洗いざらい話すのではないか、というのだった。(関連記事)
バクスターは、エンロンの内情を「知りすぎていた」から、それをばらされることを恐れた何者かが彼を殺したのではないか、と疑うエンロン社員もいた。(関連記事)
遺体が発見されたときの状況にも不審な点があった。一つは拳銃が手に握られていたことで、頭を撃って自殺した場合、銃弾発射の反動で拳銃は手から離れ、握られているのではなく近くに転がっている状態で発見されるはずだ。また、その拳銃は地元テキサス州で登録されておらず、誰の拳銃なのか分からないままである。(関連記事)
また、遺体を乗せた車が発見されたのは、大通りの真ん中で、車はUターン用の中央分離帯の切れ目に停車していた。自殺する場所として、そんな場所を選ぶ人がいるだろうか。また、警察は「今後の捜査のため」を理由に、現場で見つかった遺書らしき書きつけを公開していない。(関連記事)
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